2004年10月14日

【産婦人科】出産時の医療事故防止で病院利用推進へ…産婦人科医会


 お産の医療事故防止と妊婦の安全確保のため、産婦人科医でつくる「日本産婦人科医会」(坂元正一会長)は、診療所をかかりつけにしている妊婦もお産時に病院の設備を利用する「産科オープンシステム」を、全国で推進する方針を決めた。

 開業医の高齢化や後継者難による医師不足が深刻化する中、「役割の分担を図らなければお産の安全性が保てない」と判断した。15日、全会員に通知する。

 厚生労働省の調べによると、全国平均でお産の46・5%(2002年)が診療所で行われている。

 産科オープンシステムとは、妊婦の健診は診療所、お産は医師や設備がそろった病院で行うシステム。診療所の医師が主治医としてお産に立ち会うことができ、その場合は診療報酬を病院と分配する。すでに、都市部を中心に約1割の病院や診療所が採用している。

 同医会は7月、連絡会議を設立し、システム導入の是非を検討。「産科救急に迅速に対応できる」「複数の産科医を確保できる」などの利点と、「医師の責任が分散する」「開業医の収入が減る」などの欠点を検証したうえで、「医療事故防止とお産前後の安全性から考えれば、順次導入すべきだ」と結論づけた。

 中核病院で極端に産婦人科医が不足するなど実現が困難な地域では、診療所と病院との連携を強化したうえ、糖尿病の妊婦や未熟児の出産などリスクの高いケースを、緊急事態に対応できる病院に可能な限り集約させる。同医会では今後、各支部から報告を受けて問題点を検討、地域に合った最善のシステムづくりに向け助言していく。

 産婦人科医は医師全体の約5%に過ぎないが、昨年の医療事故の提訴件数は全体の13%を超え、医療事故の頻度が最も高く、結果が深刻な診療科の1つ。中でも診療所での事故が多く、1991年から92年にかけての妊産婦死亡例の検証では、救命可能だった出血性ショックや妊娠中毒症など62人のうち、3分の2が診療所の患者だった。

 一方、約1万2600人の同医会員のうち75歳以上が約1割を占めるなど、高齢化や後継者不足も深刻化。厚労省も来年度から、産科オープンシステムのモデル事業(予算額4900万円)を全国8か所でスタートさせる。今回、産婦人科医の団体が推進の姿勢を打ち出したことにより、施設や役割を分担する動きは一気に加速しそうだ。

 同医会の佐々木繁副会長は「医療事故や厳しい労働環境から、若い医師の産科離れが進み、お産から撤退する開業医も多い。抜本改革を行わなければ、将来、安全で安心なお産はできなくなる」と話している。

 ◆病院と診療所=医療法で、「病院」は病床数20以上、「診療所」は病床数19以下と定義されている。診療所には入院設備を持たない施設もある。現在、病院は9122か所、診療所は9万6050か所。

Posted by Naoko at 00:00 | EDIT | コメント (0) | 気になるニュース
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